Share

第4話 俺or私(02)

Author: 星琴千咲
last update Last Updated: 2025-06-01 10:11:31

金色の長い髪に、深紅色のドレス、映画にも出そうな背の高い女性が寄ってきた。

女性は片手で大介の腕を組んで、片手で何枚の万円札を酔っ払った女性に渡した。

「お金が必要だったら、これをどうぞ」

二人のおしゃれ女性に挟まれて、大介は早く離れなければ!と思いながらも、金髪の女性が酔っ払った女性にかけた言葉を聞いて、動きを止めた。

「あんた、何日もこの辺をうろついていたのね。詐欺なら、ほかの人にしてちょうだい。この人を潰すのは、私だから」

「!!」

すると、酔っ払った女性の表情がピンッと冷静に戻った。

「チッ、同業者か!」

お金を受け取って、自称捨てられた妊婦の女性は不機嫌な顔で逃げ出した。

「同業者?詐欺師……ですか?オレを潰すってどういうこと?」

「違います」

金髪の女性はにっこり大介に微笑みをかけた。

「ああでも言わないと、私はあなたの浮気相手にされて、一緒にお金を要求されるかも知れませんわ」

「なるほど……ありがとうございます。さっきの代金は……」

大介は懐から財布を取り出そうとしたら、金髪の女性に止められた。

「いいの、ギャンブルで入ったお金ですから、人助けに使ったほうがいいと思います」

女性はさりげなく大介の胸に手を当てて、そして、顔に触る。

「人間はね、普段の所業から報いを受けるの。どんなことをしてきたのか、いつも自分胸に手を当てて確かめてくださいね」

「はぁ……」

「だって、報いが来る時に考えるのはもう遅いですから」

金髪の女性は意味の分からない言葉を残して置いて、その場を去った。

その時、金髪の女性に触られても緊張感がなく、アレルギー反応も出ないことに不思議と思った。

その後も、町中で何回もその女性を見かけたような気がする。

まさか……あの女性は、この悠治という男が扮装したのか?

あの格好で、ずっとストーカーをやっていたのか?!

「……」

感謝すべきか、怒るべきか、何がどうなっているのか、大介はもう分からない。

ただ、寒い秋風のなかで希望を捨て、命が消えていくのを待つ無力な虫のような悠治を見たら、こんな変人と二度と関わらないほうが賢明だと思った。

(ああ、とんだ悪夢だった。)

翌日、大介は悪夢を早く忘れるようにパソコン作業に集中した。

いきなり、「ドンドン」と激しいドアノックが響いた。

確かに、今日はアシスタントたちを呼んだが、もう来たのか。

でもなぜドアノック?

「ベルが壊れたのか……?」

妙だと思っても、大介は玄関に向かった。

「……!!」

扉を開いて、玄関の前に立っている人を見たら、大介はまた悪夢に連れ戻された――

金色の長い髪に、深紅色のワンピース、あの悠治が扮したストーカーらしい美女が、ドアの前で仁王立ちしている。

昨日の夜と立場が逆転し、今回は大介が慌ててドアを締めようとした。

だが、その女性は力勝負でドアを押しのけた。

「さあ、大介くん、昨日やったことの報いがもう来ますよ!素直に受け取りなさい!」

Continue to read this book for free
Scan code to download App

Latest chapter

  • 俺ともう一人の私、どちらが好き?   第5話 第二人格の依頼(02)

    でも、相手は二重人格だろうと三重人格だろうと、そもそも、基本な事実が捻じ曲げられた。「いい加減にしろ!オレはお前の家に行ったのは、お前があのデタラメの小説を書いたから!」「書いたのは私じゃない、悠治です。この件に関して、私は完全に被害者ですわ」「何が完全に被害者だ……」話が通じない相手だと分かって、大介は平和交渉を諦めた。「とにかく、警察を……」スマホで近所の交番に電話をかけようとしたら、いきなり、悠子の足が飛んできて、携帯が蹴り飛ばされた。そして、悠子に後ろから両手を掴まれて、顔が下向きで机に押し倒された。「言ったでしょ。私は悠治の保護者、警察を呼ぶくらいで、私をどうにかできると思いますか?」そう言いながら、悠子は体勢を下げて、大介の手を自分の顔と首に押しつけた。「!!」それから大介を解放し、自分のスマホを出した。「さあ、警察を呼びましょう。私今、理不尽なセクハラをされました」「ひ、卑怯なっ!」今度は大介が電話を阻止するために、悠子に飛びかかった。でも悠子はワルツを踊るように、大介の動きを誘導し、体の接触を利用して、大介の手を自分の体のあちこちに触らせた。最後に、大介の腰を捕まえて、自分の上に乗せている状態で二人を床に倒らせた。そして、適時に横からスマホのカメラシャッターを押した。「証拠写真もゲットですわ」「一体、何がしたいんだ、この変態……!!!」大介の体は怒りで震えている。「写真を渡せ!」大介は携帯を奪おうと、スマホもろとも悠子の手を掴んだ。その時――「お邪魔しま~す!」玄関から、アシスタントたちの声が届いた。「大介さん、差し入れを持ってき……」「!!」「!?」「!?」二人の若い男性と一人の若い女性が、目の前の景色に呆気にとられ

  • 俺ともう一人の私、どちらが好き?   第5話 第二人格の依頼(01)

    「どういう……」大介に質問の間を与えず、金髪の女性は部屋の中に突入した。「失礼~」「ちょっ...お前、誰だ?何しに来たんだ!?」「昨日の夜、あなたに身も心もごちゃごちゃにされた悠治の保護者ですよ」「はぁ!?」(保護者?というと、あいつが扮したのではなく、違う人間なのか?)(っ、違う、そんなことより――)「誤解されそうな言い方をやめろ!オレはあのシスコンに何もしなかった。保護者って、姉か?親戚か?名前は?小説の件のために来たのか?」質問連発の大介に対して、美女は余裕そうに唇に指をあてて、ちょっと考えてから答えた。「そうですね、この姿で誰かに自己紹介したことはまだないわ……じゃあ、ペンネームの悠子でいいわ」「ペンネームの悠子……まさか、あの小説を書いたのはお前か!?」「いいえ、悠治が書いたの。クズ男に復讐するとはいえ、三流エロロマンスを書くなんて、私に相応しくないもの」「じゃあ、彼はお前のペンネームを借りたのか?」「いいえ、悠子は悠治のペンネームです」「二人が同じペンネーム?」「理解力がどうかしてるわ、出直しに来なさい」「”#$%&’()=IU'&%$#"#$%&'()000」(お前の説明こそどうかしてるじゃないか!!)がっかりそうにため息をついた「悠子」、完全に混乱に落ちた大介。それ以上大介に構わず、悠子はスタジオを回し始めた。作業台に置いてある建物の模型や企画書を見て、納得したように頷いた。「なるほど、密室脱出ゲームとか作ってますね。引きこもりで引きこもりみたいなエンターテインメントを考えているから、おかしくなったのもおかしくないですね」「それはあのシスコンのことだろ!」「あら、シスコンで悪いですね」悠子は冷笑した。「でも、ここにいる人間性も分からない男よりずっとましだと思いますわ」「人間性も

  • 俺ともう一人の私、どちらが好き?   第4話 俺or私(02)

    金色の長い髪に、深紅色のドレス、映画にも出そうな背の高い女性が寄ってきた。女性は片手で大介の腕を組んで、片手で何枚の万円札を酔っ払った女性に渡した。「お金が必要だったら、これをどうぞ」二人のおしゃれ女性に挟まれて、大介は早く離れなければ!と思いながらも、金髪の女性が酔っ払った女性にかけた言葉を聞いて、動きを止めた。「あんた、何日もこの辺をうろついていたのね。詐欺なら、ほかの人にしてちょうだい。この人を潰すのは、私だから」「!!」すると、酔っ払った女性の表情がピンッと冷静に戻った。「チッ、同業者か!」お金を受け取って、自称捨てられた妊婦の女性は不機嫌な顔で逃げ出した。「同業者?詐欺師……ですか?オレを潰すってどういうこと?」「違います」金髪の女性はにっこり大介に微笑みをかけた。「ああでも言わないと、私はあなたの浮気相手にされて、一緒にお金を要求されるかも知れませんわ」「なるほど……ありがとうございます。さっきの代金は……」大介は懐から財布を取り出そうとしたら、金髪の女性に止められた。「いいの、ギャンブルで入ったお金ですから、人助けに使ったほうがいいと思います」女性はさりげなく大介の胸に手を当てて、そして、顔に触る。「人間はね、普段の所業から報いを受けるの。どんなことをしてきたのか、いつも自分胸に手を当てて確かめてくださいね」「はぁ……」「だって、報いが来る時に考えるのはもう遅いですから」金髪の女性は意味の分からない言葉を残して置いて、その場を去った。その時、金髪の女性に触られても緊張感がなく、アレルギー反応も出ないことに不思議と思った。その後も、町中で何回もその女性を見かけたような気がする。まさか……あの女性は、この悠治という男が扮装したのか?あの格好で、ずっとストーカーをやっていたのか?!

  • 俺ともう一人の私、どちらが好き?   第4話 俺or私(01)

    雪枝と正樹の話が終わってからもう30分が経ったのにも関わらず、悠治は石化状態のままだった。おかしいことにも、大介が雪枝と正樹を見送った。帰る前に、雪枝は大介と連絡先を交換し、「今の私じゃだめだから、代わりに、お兄ちゃんを見ててくれませんか?」と頼んだ。(何故オレはそんなことを承諾したんだ……?)大介は頭を抱えながら、部屋に戻って、石化中の悠治と対面した。でも、悠治はこのまま再起不能になったら、その小説は放置される危険がある。名誉回復は難しい。(そう言えば、あの小説の描写が気になる。)知り合いじゃないのに、コーヒーの好み、電車を待つときのくせい、よく寄っている洋服の店、行きつけのレストラン、サロン……全部当たった。ひょとしたら、誰かを雇って、ストッキングしているかもしれない。(念のため、それも聞いたほうがいい)「おい、シスコン」「……」「小説の件、どうするつもりだ?もうわかっただろ?オレに関係ないことだ」「…………」パタンと、悠治は仰向けに倒れた。「おい!死ぬな!どうしてもなら、オレの名誉を回復してからにしろ!」大介はさっそく悠治の頸の脈を確認した。「救急車を呼ぶか……」大介は携帯を出したら、悠治の喉から声が漏れた。「………………無理だ……もう終わった……俺の人生は……」「シスコン人生なんか知らないけど、こっちの人生まで台無しにするつもりか?お前が何もしないなら、本当に訴える。そうなれば、賠償金も取られるぞ!」

  • 俺ともう一人の私、どちらが好き?   第3話 勘違い復讐の終了(02)

    「雪枝を傷付けたことに、深くお詫びを申し上げます!」正樹という男性は悠治に向けて土下座した。「すべては、俺の弱さのせいです!雪枝のことが本当に好きです。好きすぎで、軽蔑されるのが怖くて……付き合いが長ければ長いほど、本当のことを言えなくなったんです」「本来なら、今年いっぱいで現在の仕事をやめて、花屋を開くつもりでした……」憎しみの標的がまだ大介から正樹に転移できていない。悠治は半分浮いている状態で続きを催促した。「で、開いたら?」「開いたら、いままでのことを雪枝に謝罪して、そして、プロポーズ……」「プロっ、ポーズ――!?」その単語で、悠治の魂はやっと完全に体に戻った。「あんな酷いことをあっさりとやり過ごして、その上に、恥知らずにプロポーズするつもりか!」悠治は正樹の胸倉を掴んだ。今でもその顔を殴ろうと拳を上げた。「やめてくださいお兄ちゃん!正樹はもう十分反省してるの!」雪枝が慌てて二人の間に入って、悠治の理解不能な目線の中で正樹を庇った。「……」傍観者の大介はもう事情を理解した。雪枝と正樹の間の問題はもう解決済み。二人は兄に認めてもらうために来たんだ。こんなつまらない恋人喧嘩のために、自分が巻き込まれて、クズ男としてネットにさらされたとは……馬鹿馬鹿しい。「あの日以来、Jellyが会社で私の悪口を広めていて…とても辛かった……正樹は私のために、わざわざ私の上司に会いに行って、みんなの前で私を庇ってくれたの。花屋のことも本当よ。去年の春に、私の大好きなクチナシの畑を買ってくれたの!だから、私、正樹のことを信じる!」正樹も顔を引き締めて、真摯な態度で悠治に語る。「悠治さん、信じてくれないかもしれないけど、俺、初恋の彼女に六股されたことがあります」(すごいな!)と大介は思わず感心した。(「暴け!六股彼女の秘密」というコメディー風の謎解きゲームを作ったら、斬新かもな……そんなことを考える場合じゃないか……)「あの子はホスト遊びが大好きでした。だから俺は、ホストになれば、ああいう女に復讐できると思って、大好きなバレーボールを諦めて、ホストになりました」(なるほど、その6股がバレーボール主力6人全員ってことか……)(ちょっと待って、バレーボール選手だったのに、なんでスポーツ屋じゃなく、花屋を……そんなことを考える場合じゃない

  • 俺ともう一人の私、どちらが好き?   第3話 勘違い復讐の終了(01)

    「どうして、ここに……!?」悠治が化け物でも見た表情で声を漏らした瞬間、大介は正しいところに来たと確信した。「お前は、あの留学生ホスト小説の作者か?」「な、何が留学生ホストだ!知らないぞ!」悠治は扉を閉めようとしたが、大介が一歩早く体で扉を塞いだ。「知らんぷりをしても無駄だ。警察を呼ぶ」「け、警察を呼んでどうするんだ!」向こうが不法侵入なのに、怯んだのは悠治のほうだ。(ちくしょう、しっかりしろ俺!雪枝を騙したクズ男が目の前にいるのに、なんでなにもできないんだ!殴りくらいしろ!)悠治が戸惑った隙に、大介は部屋に侵入した。「失礼」「おい!待って!」大介はゴミだらけの部屋を見まわして、机で光っているパソコンにロックオンした。さっそくパソコンの前まで歩いて、モニターに映している文章を読んだ。【大介は顎を私の鎖骨に貼り付けて、息を吹くような声で囁いた……「俺のことが嫌いだったら、いつでも押しのけてくれ……でも、すこしでも俺にその気があるのなら、俺は待つよ……俺を完全に信じる前に、ずっと待っているから……」】「!!?」【……これから何が待っているのか、もう覚悟している。でも、今の私にとって、大介よりも大事なものはない!目を閉じて、初めての欲情が含まれたキスを受け入れた……】「!!??!!」年齢制限のレベルがどんどん上がる文字に、大介の怒りもどんどん上がっている。もう見てられない!とちょっと目を逸らしたら、机に置いてある乱れた文字で書かれたノートが目に入った。【あの夜から、大介の態度が変わった……】【ほしいのは私じゃない、私のお金だと、大介が開き直した……】【久しぶりに経験のない子とやってみたいと大介が……】【大介は私の名義で、高額な謝金を……】【送られたのは、大介がほかの女子とのラブラブ写真、その中に、私の親友もいる……】「!!!」頭の上で噴火した大介は右手でパソコンのデータを削除して、左手でノートをごちゃごちゃにした。「な、なんてことをした!!」悠治は前に出てノートを救おうとした。「それはこっちのセリフだろ!!オレになんの恨みがあるんだ!なぜオレを無知の少女を騙すクズ男に書いたんだ!」大介は身長を利用して、ノートを悠治の届かない高さに上げた。「それはお前の本性だろ!本当のことを書いて何が悪いんだ!?」(し、しま

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status